アウトソーシングの現状と課題

インターネットはもちろん、BPR(Business Process Re-engineering )やSCM(Supply Chain Management)、CRM(Customer Relation-ship Management)などの経営手法が広まるにつれ、情報システム部門の重要度が一層増してきました。

 IT化が全社的に進んだ結果、扱う情報量が膨大になり、情報処理のためのノウハウが必要になりました。そこで、それらの処理を得意とするベンダーなどへのアウトソーシングが加速しています。企業が自社の情報システム部門の負担を減らせるだけでなく、より高度なIT戦略を遂行できるようになるからです。

 ここまでアウトソーシングが一気に広がった背景には、ITインフラが非常に複雑になってきたことが挙げられます。たとえば、以前なら専用線を使いデータを送受信していたところを、ここ10年足らずで急速に普及したインターネットを活用し、高いレベルのセキュリティを保持しながら気軽にやりとりしたいというニーズがあります。また、インターネット自体を企業戦略に取り込む企業も増えています。

 そこで不安定要素で構成されているインターネットに、安全性と信頼性、高度な処理能力が求められるようになりました。もちろん、その開発に携わることができるのは、高い技術力を持ち合わせるエンジニアたちだけです。当初、質の高いエンジニアの確保にどの企業も躍起になりましたが、次第にエンジニアを自社で抱えるよりも、外部へ委託し協業していく方が効率的だという認識に変わってきました。また、技術者の人材育成の難しさもあり、この状況に拍車をかけています。

 アウトソーシングを戦略的に行うため、ベンダーなどと一緒に情報系子会社を設立し、IT全般の管理・運営にあたる手法が幅広く受け入れられてきています。以前の「外注」とは違い、商品やシステムが納入されたら終わる関係ではなく、外部の経営資源を自社内に取り込んでいこうという考えがここにはあります。以前の「外注先」が、今や欠かすことができないパートナーとして経営に携わっていく、といえば分かりやすいでしょうか。

 フルアウトソーシングでは、どこまでがその企業にとって必要なことなのか、そしてどの程度まで技術や人材を投入する必要があるのかなどを、あらかじめ決めておかなければなりません。まだ企業のIT化が本格化してから10年足らずですから、料金体系やその根拠が不明確な点も残っています。導入コストよりも、運用コストが意外とかかることも、念頭に置いておかなければなりません。したがってベンダーをいかにうまく使いこなし、また、いかにベンダーと協調して経営のシステム化を進めていくかがとても重要です。

アウトソーシングとは

景気が良くなってきているとはいえ、依然不透明な現在です。企業は、抜本的な構造改革を進めてゆく必要に駆られております。

 すべてのお客様のニーズに応えられるように、多種多様に事業を展開してきた総合商社でも、「総合」ではなく「ある業種に特化した」スタイルへと変貌を遂げてきています。大企業・中小企業に限らず、このような経営資源の「集中と選択」を行うことは、国際化の波が押し寄せている中で「勝ち組」になるために目指す上で大切なことです。

 このようにして、外部の技術資源を活用する「アウトソーシング」が注目を集めています。企業内のITに関しては、コストや効率の観点から開発部隊を自社内で抱えるのではなく、コンピュータメーカーのベンダーなど、外部の専門企業にすべて任せるところが増えてきました。

 企業ではITに関わる企画・運営・販売などを担当する情報システム部門、販売窓口だけを残す傾向にあり、このような外部へのIT業務の委託を含めた新しい経営戦略を「ITのアウトソーシング」と呼んでいます。

 当初は、リスクが少ないものや繁雑な作業を外部へ委託し、自社内のコスト削減を主眼に行われてきました。現在では、企業を抜本的に改革するための戦略の1つと、技術開発のリスク回避として「アウトソーシング」が位置づけられてきています。

 企業は、従来からのビジネスモデルを守るだけでは、国際化・情報化・スピードという点でキャッチアップしていくことすら難しくなってきており、経営資源の見直しが進んでいます。

 一方、アウトソーシングは業務のIT化を進め、そこをベンダーなどの専門企業へアウトソーシングしていきます。そこで期待できるコスト削減や省人化の成果を、アウトソーシングを導入した企業のコアコンピタンスへ投入していくことが鍵になります。コアコンピタンスの強化によってその企業の専門性が高まり、情報システム部門の観点を組み入れた企業内の構造改革が進み、勝ち組企業への躍進ができるのです。

 また、アウトソーシングの代表的一例として、企業は技術者を育てることの人的投資を極力避け、即戦力の人材を外部から期間限定で雇用することにより、短期間でコストを切り詰めるということに成功しました。