アウトソーシングでより高次元の産業構造へ転換が図られる

 アウトソーシング先進国の米国で,海外企業にプログラミングやコール・センター業務などを委託する,いわゆるオフショア事業(Offshoring)への風当たりが強くなっている。連邦下院議会では今年6月にオフショア・ビジネスに関する公聴会を開き,国内雇用市場への悪影響を調べ始めた。これは労働組合などから「我々の雇用が外国人に奪われている」という非難の声が,議員に寄せられたからだ。
 米IT企業のアウトソーシング先は、今までインドが多く,全体の6割以上を占める。上位500社のIT企業の中で,300社以上がインドにコール・センターやデータ・センターを設けている。しかし最近ではインドばかりでなく,ロシアやルーマニアなど旧共産圏諸国,タイやフィリピンなど東南アジア,ブラジルを始めとする近隣のラテン・アメリカ諸国など,オフショア注文が広がっている。

 同じことが現在のIT業界でも起きるのではないかと懸念されていて、これに対し,米国のインド系エンジニア団体などは,「労働力のオフショア化はむしろ米国経済の助けになる」と反論している。

 インド系エンジニア団体の見解によれば,今後米国でも人口の老齢化が進み,労働力は不足気味になる。それを補う上で,海外の労働力がむしろ必要となってくるという。またオフショア化によってコール・センター業務など,単調で低賃金の職種が海外に移行することにより,米国内にはむしろ研究開発など,より付加価値の高い職種が育成される。つまり,より高次元の産業構造へと転換が図られるというのだ。

 もちろん事態がそれほどバラ色ではないことは容易に想像がつく。メーカーが工場を海外移転するのとは違い,IT関連職のような頭脳労働の場合,相当高いレベルの業務まで海外の技術者に任せることが可能だ。パソコンとインターネットさえあれば,原理的には出来ないことはないはずである。

 これはIT業界から少し外れるが,Evalueserveのようなインド系の有力アウトソーシング業者は,米国のコンサルティング会社や投資銀行などから,市場調査やポートフォリオ分析など高度な業務を受注し,インド国内のリサーチャーにやらせている。すなわちコール・センターのような単調業務から高度な調査業務まで,あらゆるレベルの仕事において,国内と海外の労働者が競い合う時代が訪れつつあるのだ。

アウトソーシングを成功させるために

 ベンダー主導のアウトソーシングにもメリットがありますが、限られた予算内に収めることやトラブルを未然に防ぐためにも、ユーザーである企業主導で情報系子会社の運営にあたる方がいいでしょう。また、自社の情報システム部門にノウハウの蓄積がなくても、自社で行うこととアウトソースとして頼むことを明確化し、ベンダーなどへきちんと伝えることが大切です。

 また、情報システム部門自体もアウトソースを利用し、自社内から無くしてしまうという流れも一部にはあります。そのことで、システムを必要とする部門が直接ベンダーなどと交渉することができ、部門からの要求が伝わりやすくなるのがメリットです。しかし、同時にシステムに詳しい人間が社内にいないという状況を生み出すことになり、自社内でのITに関するノウハウの蓄積や共有が行われなくなる可能性も出てきます。

 アウトソーシングは今や、ユーザー企業とベンダー企業の得意分野を生かしたコラボレーションへと発展してきています。協業することでそれぞれのコアコンピタンスが生き、より強固な企業体を作り上げることができるため、競争力強化につながります。ですから、アウトソーシングによるコストダウンも当然効果として現れますが、それを過度に期待するのではなく、アウトソースによって人材やノウハウ不足を解消することのメリットが大きいと考えるべきでしょう。ノウハウがあり、長期的視野を持った提案ができ、信頼が持てるシステムベンダーとの出会いが大切です。

アウトソーシングの現状と課題

インターネットはもちろん、BPR(Business Process Re-engineering )やSCM(Supply Chain Management)、CRM(Customer Relation-ship Management)などの経営手法が広まるにつれ、情報システム部門の重要度が一層増してきました。

 IT化が全社的に進んだ結果、扱う情報量が膨大になり、情報処理のためのノウハウが必要になりました。そこで、それらの処理を得意とするベンダーなどへのアウトソーシングが加速しています。企業が自社の情報システム部門の負担を減らせるだけでなく、より高度なIT戦略を遂行できるようになるからです。

 ここまでアウトソーシングが一気に広がった背景には、ITインフラが非常に複雑になってきたことが挙げられます。たとえば、以前なら専用線を使いデータを送受信していたところを、ここ10年足らずで急速に普及したインターネットを活用し、高いレベルのセキュリティを保持しながら気軽にやりとりしたいというニーズがあります。また、インターネット自体を企業戦略に取り込む企業も増えています。

 そこで不安定要素で構成されているインターネットに、安全性と信頼性、高度な処理能力が求められるようになりました。もちろん、その開発に携わることができるのは、高い技術力を持ち合わせるエンジニアたちだけです。当初、質の高いエンジニアの確保にどの企業も躍起になりましたが、次第にエンジニアを自社で抱えるよりも、外部へ委託し協業していく方が効率的だという認識に変わってきました。また、技術者の人材育成の難しさもあり、この状況に拍車をかけています。

 アウトソーシングを戦略的に行うため、ベンダーなどと一緒に情報系子会社を設立し、IT全般の管理・運営にあたる手法が幅広く受け入れられてきています。以前の「外注」とは違い、商品やシステムが納入されたら終わる関係ではなく、外部の経営資源を自社内に取り込んでいこうという考えがここにはあります。以前の「外注先」が、今や欠かすことができないパートナーとして経営に携わっていく、といえば分かりやすいでしょうか。

 フルアウトソーシングでは、どこまでがその企業にとって必要なことなのか、そしてどの程度まで技術や人材を投入する必要があるのかなどを、あらかじめ決めておかなければなりません。まだ企業のIT化が本格化してから10年足らずですから、料金体系やその根拠が不明確な点も残っています。導入コストよりも、運用コストが意外とかかることも、念頭に置いておかなければなりません。したがってベンダーをいかにうまく使いこなし、また、いかにベンダーと協調して経営のシステム化を進めていくかがとても重要です。

アウトソーシングとは

景気が良くなってきているとはいえ、依然不透明な現在です。企業は、抜本的な構造改革を進めてゆく必要に駆られております。

 すべてのお客様のニーズに応えられるように、多種多様に事業を展開してきた総合商社でも、「総合」ではなく「ある業種に特化した」スタイルへと変貌を遂げてきています。大企業・中小企業に限らず、このような経営資源の「集中と選択」を行うことは、国際化の波が押し寄せている中で「勝ち組」になるために目指す上で大切なことです。

 このようにして、外部の技術資源を活用する「アウトソーシング」が注目を集めています。企業内のITに関しては、コストや効率の観点から開発部隊を自社内で抱えるのではなく、コンピュータメーカーのベンダーなど、外部の専門企業にすべて任せるところが増えてきました。

 企業ではITに関わる企画・運営・販売などを担当する情報システム部門、販売窓口だけを残す傾向にあり、このような外部へのIT業務の委託を含めた新しい経営戦略を「ITのアウトソーシング」と呼んでいます。

 当初は、リスクが少ないものや繁雑な作業を外部へ委託し、自社内のコスト削減を主眼に行われてきました。現在では、企業を抜本的に改革するための戦略の1つと、技術開発のリスク回避として「アウトソーシング」が位置づけられてきています。

 企業は、従来からのビジネスモデルを守るだけでは、国際化・情報化・スピードという点でキャッチアップしていくことすら難しくなってきており、経営資源の見直しが進んでいます。

 一方、アウトソーシングは業務のIT化を進め、そこをベンダーなどの専門企業へアウトソーシングしていきます。そこで期待できるコスト削減や省人化の成果を、アウトソーシングを導入した企業のコアコンピタンスへ投入していくことが鍵になります。コアコンピタンスの強化によってその企業の専門性が高まり、情報システム部門の観点を組み入れた企業内の構造改革が進み、勝ち組企業への躍進ができるのです。

 また、アウトソーシングの代表的一例として、企業は技術者を育てることの人的投資を極力避け、即戦力の人材を外部から期間限定で雇用することにより、短期間でコストを切り詰めるということに成功しました。